アメリカのDRAGON BALL事情




皆さんもご存じである通り近年の北米におけるドラゴンボールブームには凄まじいものがあります。
ついに来春には実写化された劇場版が春に日本で先行公開される予定です(2008年6月現在)。
ところがそんなアメリカも、人気の切っ掛けとなった初めてのドラゴンボールZの放送が行われたのは
実に1996年になってからで、日本では既にZの放送が終了したあとだったのです。

さて、ではそんなアメリカにおいてどの様にドラゴンボールが人気を得て行ったのか時代を追って見ていきましょう。




1989年


 1989年、アメリカでアニメ版無印ドラゴンボールの放送が試験的に開始されました。ただ放送されたのはごく限られた地域で、あまり人気が出ず話も白桃桃との初戦の辺りで打ち切られてしまったそうです。翻訳・吹替えをしたのはHarmony Gold社で、他の作品ではRobotechなどが有名なところです。このバージョンは現存しているメディアが非常に限られているので、アメリカのドラゴンボールファンの間では"Lost Dub"と呼ばれています。このバージョンの何といっても一番の特徴は、登場キャラのほとんどの名前が変更されているところでしょう。例えば主人公である悟空の名前は"Zero"、クリリンは"Bongo"、ブルマが"Lena"などといった具合です。劇場版一作目と三作目がこの時吹き替えされたという情報もあります。本編における残虐表現や性表現の修正に関しての情報はありませんが、先述のRobotechでHarmony Gold社は当時アメリカに輸入された日本アニメとしては先駆けてそういった表現をあまり規制せずに制作したため、ドラゴンボールにおいても同じ方針であった可能性は十分にあります。

 未だにはっきりとした情報が無いのでいまいち不明な点が多いことなのですが
、中南米には昔このバージョンが二次輸出されていました。いくつか出ている映像を見る限りでは悟空のことを「Zero(セロ)」と呼んだりしていて、このHarmony Gold版から翻訳したものであるのは間違いないようです。ちなみにあのぱふぱふもカットされずに放送されていたようです。これに関して何か詳しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非メールでご一報下さい





1995年


 この年にドラゴンボールのアメリカへの二度目の進出が行われます。1994年に権利を買い取ったのは、後にアメリカでの日本アニメ産業を背負うことになると言っても過言ではないFUNimation Production社(現FUNimation Entertainment)で、当時はまだ弱小企業であったので単独で製作することができずKidMark Entertainmentと組み、また吹き替えはカナダにあるOcean Groupに任せることによって放送まで漕ぎ着けました。しかし無事放送はされたものの結果は無残なもので、第一期28話を予定していたところたったの13話で打ち切りという憂き目に遭っています。これでドラゴンボールは北米での二度目の失敗を喫することになります。

 このバージョンには"The Saga of Goku"サブタイトルが付いていて、一番の特徴は低年齢層を狙うため年齢制限を低くすべく裸体や暴力表現などに全面的に修正が加えられていることです。DRAGON BOXをお持ちの方はご存知かと思いますが、何と一話冒頭の悟空がしっぽを使って巨大魚を釣るシーンですら悟空の尻に真っ白なブリーフがCGで書き加えられています。ずいぶんと清潔な野性児ですね。画像は後ほどアップしたいと思います。またもう一つの特徴はBGMがすべて新たに作曲されたものに差し替えられていることで、いかにもアメリカらしいディズニーのような曲に変わっています。OPについてもこれまたBGMと同様とってもアメリカンなテイストで、「仲間たちが助けてくれる〜」だとか、説明的な歌詞の歌に変わっています。何故か映像は劇場版1作目のものを使っています。EDもこれまたありがちなOPのインスト版です。





1996年

 ついにこの年にドラゴンボールZがアメリカに進出します。前回の無印ドラゴンボールの失敗からFUNimation社はKidMark Entertainmentとの契約を切り、代わりに特撮作品パワーレンジャーなどで有名なSaban Entertainmentと組み、声優は再びOcean Groupを起用することによって心機一転大胆にも物語の途中であるZの第一話から放送を始めました。人気は一時的に上がったものの長くは続かず、1998年に視聴率の低下により打ち切られ三度目の失敗を喫します。結局ギニュー特選隊が終わる辺りまでしか吹き替えられることはありませんでした。しかしその後年末にはカートゥーンネットワークのTOONAMI枠で放送が開始され、セーラームーンと共に人気を博し次第に広く支持されるに至っていきます。

 前回と同じく視聴者の年齢層を広げるため画面のCGによる修正を行い、台詞も控えめな表現に変えられました(例:殺した→異次元に送った)。やはりBGMは変更され、また多くのシーンのカットのため話数が大幅に減っています。こちらのOPは
"Rock The Dragon"という曲名で、歌詞は説明どころか数単語を繰り返すのみです。映像は上記の無印と同じくほとんど劇場版からとられており、恐らくは見栄えの良さとネタバレの防止のためでしょう。





1999年

 遂に1998年から始まったカートゥーンネットワークでの放送が人気を集め、翌99年からFUNimation社がSaban Entertainmentとの契約を切り、独自の声優を使ってシリーズの続きの制作・放送を開始しました。その後ドラゴンボールZの人気はうなぎ昇りになり、2002年にはGBAで初のドラゴンボールZのゲームが発売されたのを切っ掛けに、PS2など各ハードでテレビゲームが制作されどれも大ヒットを記録するまでになりました。これらのゲームは日本でも発売され、日本におけるリバイバルブームの発端の一つにもなっています。更には"dragonball"が2年連続で米LYCOSの検索ワード1位に輝きました。

 残酷表現などの修正は前ほどには行われていないものの、16号の頭が踏みつぶされるシーンで血らしき液体が飛び散る部分が全てCGで修正されて機械のコードなどになっていたり、TV放送版ではそれなりの修正が施されています。VHS版は修正版と無修正版があり、DVDはすべて無修正になっています。

 OPとEDは歌の無い正直味気ないもので、映像の編集も含め個人的にはかなり低レベルに思えます。特にガーリックJr.編から人造人間編で使用されたOPが一番酷いです。ちなみにフリーザ編が終わるまではこちらのバージョンでも96年版と同じOPとED(スタッフ表記が違う)を使用しています。




2001年

 1995年のたった13話のリリース以降音沙汰の無かった無印シリーズでしたが、2001年からようやくFUNimationによる新たな吹き替えが成されました。しかしまだKidMark社の権利が残っていたため、始めの13話は権利が期限切れになるまでリリースできないという事態になっていました。Zに対して無印はあまりアメリカの子供にはウケが良くないようで、現在DVDが廃盤状態であるなどからも人気の無さが伺えます。

2011/12/31追記: 2009年にリマスター版DVDBOXが発売されました。


 このシリーズの特徴はBGMが日本のオリジナルのままだという点です。アメリカでリリースされてきた吹き替え版はこれまでほとんどOP・EDともに曲が改変されていましたが、下記の通りそれらに至るまで他の吹き替えより明らかにレベルが高いです。OPは日本の「魔訶不思議アドベンチャー」の英訳版で、曲はだいぶアレンジされています。EDも原曲のアレンジですが、何といってもアメリカで両方とも原曲をちゃんと使用するなんてとても珍しいことです。



2005年

 2005年、FUNimationはそれまで96年から吹き替えされたバージョン(Ocean Dubバージョン)をリリースしていたPioneer側が権利を持っていたため吹き替えすることのできなかった最初の67話(旧53話)を契約期間が切れたことにより吹き替えることが可能になりました。これによFUNimationはアンカット版をすぐにカートゥーンネットワークで放送し、後に"Ultimate Uncut Special Edition"と称してDVDをリリースし始めます。しかしまだ最後までリリースし終わっていないにも関わらず2006年に途中で発売を中止し、その後下記のSeason Boxsetsへと強制的に移行することになります。



2007年

 2006年に発売が中止されてからしばらく放置状態だったDVDのリリースでしたが、2007年の2月から"Season Boxsets"シリーズのリリースが始まり、今度は全291話全てのリリースが予告されています。映像は全て独自のデジタルリマスタリングを施しており、日本版のリマスターとは傾向の違った仕上がりになっています。ただし問題なのがアスペクト比で、16:9にするために上下がトリミングされておりカットによっては違和感を拭い切れない感じになってしまっています。ただしその代り左右5%ほどマスターから取り込む際新しく入れているので、今まで見えなかったところが少し見えたりするのはちょっとだけ新鮮だったりします。サイヤ人編でいえば実に3回目となるDVDリリースですが、2007年のアニメDVDの売上げトップを記録するなど驚異的な売り上げを見せています。

 音声は3つ収録されていて、一つは日本版、もう一つは以前からのアメリカ版BGMのもの(声は新録)で、最後の一つが今回のウリの一つになっている日本版オリジナルBGM+英語音声のトラックです。なかなか新鮮ですが英語音声に日本のおとなしいBGMが流れていると妙に違和感を覚えます。




2008年

 遂にZに続きGTもリマスター版BOXが発売されました。Zと違い上下のトリミングは無く、画面比率は4:3での収録となっています。内容は基本的には前のDVDとは変わらないのですが、こちらも日本版BGM+英語吹き替え音声のトラックが収録されており新鮮です。残念なところを挙げれば、マルチアングル仕様ではないのでOPや各話の題名画面が英語版しか収録されておらず、また次回予告もカットされている点でしょう。あと、原因はわかりませんがミスター・サタンの名前が全編に渡って修正版の"Hercule"という名前に変わっています。

OPは遂に日本版と同じDANDAN〜を採用しました。歌手は何とZでブロリーを演じた方だそうです。EDも日本版に準じたものが収録されています。あくまで噂ですが、これは無印の時と同じスタッフが今回大きな発言権を持っていた為だと言われています。






劇場版

 

 アメリカでは劇場版作品もまたテレビシリーズと同様にとても複雑なリリースの経緯を辿っています。まず無印劇場版1作目ですが、これは前述の通り1995年に吹き替えたKidMark版が存在します。しかしDVDには収録されているものの当時テレビ放送されたという記録はまだ見たことが無いので、正確な年数は今のところ不明です。

 放送された記録がはっきり分かっているもので最初に放送されたのがZ三作目にあたる「地球まるごと超決戦」です。北米で初めて放送されたのは1997年11月15日で、これがパート1という形で前半部分だけ放送されたようです。次にパート2と3が翌週の22日に一遍に放送されました。吹き替えたのは1995年からのTVシリーズと同じくカナダのOcean Groupで、内容もまた同じくCGによる修正や場面のカットが行われています。BGMも全て置き換えられていています。ちなみにこの作品がIan James Corlett氏の最後の悟空(亀仙人)役になったようです。

CGによる修正の例

 この次にリリースされたのがZの劇場版1〜3作目で、吹き替えは再びOcean Groupによるもの。Pioneer Home Entertainmentによって1998年にVHSとLD、DVDでそれぞれ発売されました。三作目は早くも吹き替えされ直されたことになります。悟空役はTV版二代目のPeter Kelamis氏が演じています。Uncutを唱っているだけあって映像は日本版そのままで、主題歌やBGMも日本版のまま使用されています(TV放送時のみ主題歌はRock The Dragonに差し替え)。唯一効果音だけはいかにもアメリカ風の音が上から被せられています。個人的にはアメリカの吹き替えで一番好きなのはコレです。理由としてはピーター氏は男性のわりに声が高く日本人にとっての悟空観をあまり崩しませんし、何といっても前述の通りBGMが菊池俊介氏のもののままであることが挙げられます。アメリカ版で日本版BGMを使用したものはこの後Season Boxsetsに至るまで一切ありません。

 そして、同年に遂にFUNimation社が自身による劇場版の吹き替えを始めます。無印二作目の魔神城のねむり姫は初めてのFUNimaiton社独自の吹き替えになります。OPとEDは95年のKidMark版のものが使用されましたが、劇中のBGMは日本版のままだったようです。この後次々とZの劇場版がリリースされていきますが、最初の三作は上記のバージョンによりリリースの権利がFUNimationに無かったため、しばらく発売されませんでした。

工事中…







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